多発する自然災害やコロナの問題など、先行きが不安な現代を生きている私たちにとって、自給自足の手段や知識を手に入れておくことは、今まで以上に重要なものとなってきているのではないでしょうか。
私はコロナ禍以降、本業の飲食店を休業中ですが、その休業の時間を無駄にしないため、電力の自給や野菜の自給などに取り組んでおります。
今回は私がここ1年の間に経験した粘土団子と自然農について、私なりの率直な意見や感想をお伝えしてみようと思います。
とか、
といった方にこそお伝えしたい内容となっております。
これらの農法に興味を持たれている方は、ぜひ参考にしてください。
動画もあります
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結論からお伝えします
これから粘土団子か自然農か、どっちかをやってみようと思っている人がいたとしたら、私は「どっちも同時にやってみた方がいいよ!」と言いたいです。
私は最初に粘土団子だけを半年以上やってみて、その後に自然農にも取り組み始めたのですが、「あぁ、最初からどっちもやっとけばよかった」と思ってしまったんですよね。
他の人たちにはそういう思いをしてほしくないと思ったので、この記事を書きました。
なぜそう思ったのかをこれからお伝えしていきます。
補足
この記事内では、福岡正信氏の提唱する農法「自然農法」と川口由一氏の提唱する農法「自然農」という呼び方が紛らわしくなるため、福岡正信氏が提唱する自然農法のことを粘土団子農法、または粘土団子と呼ばせていただきます。
なぜ私がこの2つの農法を選んだか
私は従来の農業には「なんだか大変そう」というイメージが強く、あまり興味を持てなかったのですが、福岡正信氏の著書「わら一本の革命」という本を読むことで自然農法に強く惹かれ始め、まずは2020年4月から粘土団子による野菜づくりに挑戦し始めました。
そして、2021年はさらに積極的に野菜づくりに関わりたいと考え、粘土団子の精神に通じる農法が何かないかと調べたときに出会ったのが川口由一氏の自然農でした。
それぞれの農法について
この記事を読む人は、おそらくご存知なのではないかと思いますが、それぞれの農法について手短にご紹介します。
福岡正信氏が提唱する自然農法(粘土団子)とは
福岡正信氏が提唱する自然農法(粘土団子)とは、さまざまな植物の種を粘土団子の中に含めて乾燥させたものを、野菜を育てたいと思う場所へ放り投げるだけ、と言う農法です。
粘土団子に含まれる種の中で、その場所に合った種があれば勝手に育つ、という完全に自然任せの農法です。
この農法はどちらかというと日本国内よりも海外で評価されており、砂漠の緑化のための方法の1つとして利用されています。
私はこの農法を2020年4月から現在まで実践中です。
川口由一氏が提唱する自然農とは
自然農は、粘土団子に比べると従来の畑のイメージに近い農法ですが、「耕さない」、「持ち込まない」、「草や虫を敵にしない」と言う特徴があり、その場にある自然界のものだけを活かした農法です。
私はこの農法を2021年2月から現在まで実践中です。
それぞれの農法の比較
まずはそれぞれの農法を6つの項目ごとに比較しながら、その特徴を整理していきたいと思います。
粘土団子 | 自然農 | |
---|---|---|
農法のタイプ | 理想的 | 実践的 |
生態系の活用法 | 丸ごと活用 | 一度壊して再構築 |
短期での収穫のチャンス | 少ない | 多い |
観察のしやすさ | しづらい | しやすい |
手がかかるかどうか | かからない | かかる |
学習の機会 | 少ない | 多い |
今のところ思いつくのはこういった違いです。では、それぞれの違いについて詳しくご紹介していきます。
農法のタイプ
粘土団子農法は、粘土団子に含まれる種の中で、その場所に合った種があれば勝手に育つ、という完全に自然任せの農法です。
雑草のように勝手に野菜が育つ環境って、理想的ですよね。
理想的なだけに、多くの人がこの農法を試してみたくなると思います。
一方、自然農の方は、まずは畑の畝を作ることからスタートするため、従来の農業に近いものと感じてしまい、あまり興味を持てない人が多いかもしれません。
こちらは実際にやってみて初めてその楽しさがわかるところから、実践的な農法という紹介をさせていただきます。
生態系の活用法
この点が2つの農法の大きな違いとなる重要な部分です。
粘土団子は自然界の中に粘土団子を放り込むだけなので、そこにある生態系を丸ごと活用する農法と言えるのではないでしょうか。
一方、自然農の方では、野菜づくりの舞台となる畝を作るところから始まるため、畝立て作業によってそこにあった生態系は一度大きく破壊されます。
でもその大胆な環境破壊は基本的に最初の一度だけです。
野菜づくりに適した地形が整ったら、後はその形を維持し続けながら、野菜づくりに適した生態系を新たに育てていくことになります。
草や虫たちの営みを上手に活用しつつ、野菜に都合の悪い状況だけは人間が介入して野菜を育てていく、といった感じですね。
ここの、人間が介入する余地があるというところが、自然農の面白いポイントです。
野菜の観察のしやすさ
粘土団子農法の場合は、自然界の中に粘土団子を放り込むため、すでにそこにある草などが邪魔で粘土団子の観察はなかなか容易ではありません。
仮に粘土団子が観察しやすいポイントに置かれたとしても、その粘土団子から何が育つかは環境次第なので、仮に何かが粘土団子付近で育ち始めたとしても、それが野菜なのか草なのか、特定することは難しいです。
特に私のような畑の素人には全く見分けがつきません。
一方、自然農では、畑のどこに何の野菜を植えたかというのはわかっているため、そこで育っているのが野菜なのか草なのかを特定することは比較的簡単です。
短期での野菜の収穫チャンス
これは私の経験での話になってしまいますが、ここ1年の粘土団子の取り組みの中で収穫できた野菜はほとんどありませんでした。
具体的に収穫できた野菜を挙げると、小さい人参が数本と、巨大なルッコラとからし菜がそれぞれ1株ずつです。
収穫は少なかったですが、ルッコラやからし菜の大きさにはちょっとビックリしました。
あと、収穫はできませんでしたが、春菊とパースニップは大きく育って花を咲かせたものがいくつかあります。
一方、自然農は取り組み始めてまだ半年程度ですが、すでにそれなりの量の野菜が収穫でき始めています。
畝を立てて野菜が草に負けないよう少し手入れをしただけなのに「こんなに育つものなのか」と感心しました。
具体的に収穫できているものを挙げると、のらぼう菜、春菊、結球レタス、サニーレタス、ロメインレタス、水菜、ケール、パセリ、ハーブセロリ、ラディッシュなどです。
1年ちょっと取り組んだ私の結果で比較すると、粘土団子より自然農の方が収穫は多かったです。
ただ、おそらく粘土団子は1年程度では結果が出にくい農法なのではないかと思うので、もしかしたら数年後は粘土団子の畑からも多くの収穫ができるようになるかもしれません。
手間の多さ
この点は人によってメリットにもデメリットにもなるところですね。
手がかからない方が楽でいい、という人もいれば、野菜の成長を手助けして少しでも多く野菜を収穫したい、という人もいるでしょう。
粘土団子農法でかかる手間といえば、粘土団子を作ることくらいで、あとは野菜を育てたいエリアにその粘土団子をまいて育つのを待つだけです。
手間がかからないと言うよりは、手を出してはいけない農法です。
一方、自然農の方は育てたい野菜の種を適切な時期にまいたり、草を刈ったり、刈った草を畝に敷き詰めたりなど、多くの手間がかかります。
さらには野菜に集まってくる虫もいるので、それらの虫にどう対処するかも考えなければなりません。
自然農では、どれだけ適切に手をかけられたかで、収穫の量が変わってきます。
学習の機会
私が今回の記事で特にお伝えしたいのが、この学習の機会についてです。
野菜についての予備知識が多くある人であれば、粘土団子を観察して学べることはあるのかもしれませんが、野菜のお世話ができないことや観察が難しいといった点から、畑の経験が少ない人は粘土団子での野菜づくりから学べることは、おそらくとても少ないのではないでしょうか。
一方、自然農は種をまいてから収穫するまでの間、野菜が育つのを終始見守り続けることになります。
どうすれば野菜がよく育つのか、あっちの野菜は元気なのになぜこの野菜は弱っているのか、この野菜に集まってくるこの虫は何なのか、どう対処すればいいのかなど、本やネットで野菜についての情報を詳しく調べたり、誰かに聞いたりなど、自分なりに色々と考えて試行錯誤を繰り返すことになると思います。
自然農での野菜づくりは、畑の経験が乏しい人ほど多くの知識をまとめて身につけられる貴重な機会になることは間違いありません。
もし自然の力を利用した野菜づくりの知識を身につけたいと思っている人は、まずは自然農を試してみることを強くお勧めします。
私は自然農での野菜づくりを経験してはじめて、「自分は野菜や草や虫について何も知らなかったんだなぁ」と痛感しました。
これは粘土団子の成長をただ見守っていた頃の私ではいつまで経っても気づけなかったことだろうと思います。
まとめ
冒頭で先に結論からお伝えしましたが、なぜ2つの農法を同時にやった方がいいかというと、どちらの農法に取り組むにせよ、自然界の力を利用した野菜づくりの知識が重要になるからです。
私のようにその知識が乏しい段階だったとしても、自然農であれば、野菜のお世話をしたり観察したりすることで学ぶ機会が増えて、いつの間にか野菜や草や虫の知識が少しずつ身についていくと思います。
そして、自然農で色々な経験を積んでいる間に、手間のかからない粘土団子での野菜づくりも同時に試しておくことは、野菜の収穫や知識を増やすことに確実にプラスになると思います。
自然農に取り組むことで、自然界の力を利用した野菜づくりの知識が増えていって、その結果、徐々に粘土団子を観察する目も養われていくのではないかと思っています。
私はまだまだ粘土団子から何かを学べるようなレベルではないですが、虫たちの行動から、以前は全く見えていなかったものに少しは気づけるようになってきました。
ただ、粘土団子を試そうと思うと、ある程度広い土地が必要になってくると思うので、もしあまり広い土地を畑にできない場合は、まずは自然農から試すことをオススメします。
広い土地がある人は、粘土団子と自然農を同時に試し始めて、野菜も知識も経験も同時にいっぱい手に入れてしまいましょう。
私たちが参考にしている書籍
自然農法(粘土団子)の書籍
わら1本の革命
私が野菜づくりに興味を持ち始めることができたのは、この本のおかげです。
単純に読み物として面白いので、まずはこの本を読んでみることをお勧めします。これを読んだら、おそらく多くの人が粘土団子を試してみたくなるのではないでしょうか。
自然農の書籍
はじめての自然農で野菜づくり
まずはこの本を見ながら畝づくりを始めました。自然農の始め方が手短に紹介されているので、まずはこちらを参考に始めてみることをお勧めします。
このような本を1冊持っていると、その本の方針に沿って自然農を一通り実践できるのでおすすめです。
注意点としては、育てる野菜によって畝の幅が1mだったり3mだったりするので、まず育てたい野菜は何かを事前に決めて、その野菜に必要な畝の幅を知ってから畝立て作業に進んだ方がいいということです。
私たちはまず1m幅の畝を5本作って、その後に野菜の育て方のページに進んでしまったため、広い幅の畝で育てる野菜をどうするか、後で困ることになりました。
自然農・栽培の手引き
こちらの本はそれぞれの野菜ごとの育て方が細かく書かれているため、「自然農で野菜づくり」ではわからない部分などを補うような役目として活用させていただいています。
また、虫との付き合い方についての心構えなど、面白い記事もありました。
まずは「自然農で野菜づくり」の本から試してみて、さらに知識を深めたいと思ったときにはこの本を手に取ってみるのがいいのではないかと思います。
個人的に嬉しかった内容は、基本的に畝の幅が1mであることを想定した野菜づくりを紹介してくれている点です。
私たちが取り組んでいる畑は1mの畝が基本となっているため、とても参考になっています。
最後に
粘土団子と自然農、どちらもとても魅力的な農法です。
興味を持っている方はぜひ一度実践してみてください。私は現在とても楽しく野菜づくりに取り組めています。
これまでの私たちの自然農の取り組みの様子は全て公開中
私たちが取り組んでいる粘土団子や自然農の様子、お店の周辺の様子などは毎日カフェかなっぺホームページの日記コーナーで公開中です。
2021年の4月以降は毎日更新しており、自然農で育てている色々な野菜の成長の変化を見比べるのは面白いと思います。興味のある方はぜひご覧ください。
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