「あの野良猫、弱ってるみたいだけど、うちでは飼えないから・・・」という複雑な思いを抱えている方、おりませんか?
一般的には野良猫にエサを与えるのは悪いことだと言われているため、ただ見て見ぬふりを続けている人、多いのではないでしょうか。
そんな方々に伝えたいことがあります。
たとえ家で飼わなくても、その猫を助ける方法はあります。
猫を飼えない人が野良猫を助ける方法【野良猫の保護・地域猫について】
今回は不幸な猫を増やさないよう上手に野良猫と付き合っていくための「地域猫」という存在についてご紹介します。
なぜエサを与えてはダメなのか
野良猫にエサを与えた場合、その猫は元気になり、繁殖能力が高まります。
すると当然のことながら、どこかでその野良猫の子猫が生まれます。
環境省の資料によると、1頭のメス猫が1年後には20頭以上、2年後には80頭以上、3年後には2000頭以上に増えると試算しています。
野良猫にエサを与えるという行為は、その地域の野良猫を大量に増やす原因を作る結果につながるわけです。
じゃあどうすればいいの?
責任を持って家で飼うことはできないけど、見殺しにするのも忍びない。
そういった場合にできることが「地域猫として管理する」という方法です。
地域猫とは
ウィキペディアでは地域猫について次のように定義されています。
地域猫(ちいきねこ)とは、特定の飼い主がいないものの、地域住民の認知と合意の上で共同管理されている猫を指す。
これだけだと、ちょっとわからないですよね。
今回は個人の方に向けて記事を書いているため、まずは「管理」するための最重要ポイントのみお伝えします。
地域猫として管理するために最も重要となるのは「不妊去勢手術をすること」です。
手術するなんてかわいそう?
生後6ヶ月を過ぎた猫は、地域猫だけでなく飼われている猫も「不妊去勢手術」をすることが一般的に推奨されています。
それはなぜでしょう。
答えは、年間数万頭もの猫が保健所などの施設で「殺処分」されているからです(※)。生まれてきたばかりの子猫がより多く殺処分されています。
病気でもない猫を手術する行為は不自然なことと思われるかもしれませんが、生まれてきたばかりの猫を殺処分することはもっと不自然なことだと言わざるを得ません。不幸な猫が生まれ続けている今の社会で何を優先するか考えた結論が「不妊去勢手術」という答えになっています。
※ 手術する理由は他にもありますが、今回は地域猫の話なのでその1点に絞って解説しています。
手術自体のリスクについて
手術すること自体のリスクを心配する人もいると思います。
もちろんリスクが0とは言えませんが、一般的に不妊去勢手術が推奨されているだけあり、手術によって命が失われる危険性は低く、ほとんどの猫は手術しているのかしていないのかわからないような元気な姿で生きています。
野良猫の保護についての参考例
参考例その1 : 福岡県の「あすなろ猫活動」
猫の過剰繁殖問題を解決するため、協力獣医師と県民ボランティアが連携し、野良猫へ不妊去勢手術を行う活動が、福岡県で行われています。
「あすなろ猫」とは「まだ地域猫の条件は満たさないが、一定の地域に住み着いてエサを与えられている猫で、将来地域猫に昇格するために、不妊去勢手術を施されマーキングされた猫」と、福岡県獣医師会では定義しているようです。
あすなろ猫活動で行われる不妊去勢手術はメスが10,500円、オスが5,250円と、通常の手術のおよそ半額程度で手術できます。
野良猫以上、地域猫未満の「あすなろ猫」。個人でも取り組みやすい現実的な事業だと思います。
参考例その2 : 神奈川県横浜市の「いつもへそ天」
神奈川県横浜市でTNRを中心に活動をしている任意団体で、月1ペースで開催している譲渡会やホームページを使った里親探しも行っています。
「いつも安心してへそ天で寝られる環境を1匹でも多くの猫に探してあげたい」という思いから【いつも へそ天】という団体名となっています。
メンバーそれぞれができる範囲でTNRや里親探しの活動を続けていて、ホームページ開設からの約2年間の間に300以上の里親を見つけています。
詳しくはいつもへそ天のホームページをご覧ください。
妻(カナエさん)の妹のナナコさんが主要メンバーとして関わっており、私は団体発足直後にホームページ作成を担当させていただきました。
参考例その3 : 私たち夫婦の取り組み
私たち夫婦は自分の敷地にたどり着いた「明らかに飼い主がいないと思われる猫」で「放っておいたら死んでしまいそうな猫」に限り保護し、これまで10頭ほど不妊去勢手術をしてきました。
他の誰かが「地域猫にしよう」と考えて捕まえないよう、手術済みの証として耳のV字カットもしています。
手術をした猫の中にはいつの間にかいなくなる猫もいますが、ほとんどの猫は私たちの敷地に戻ってくるので、自分たちが関わった猫に限り毎日エサを出し、食べ終えたら片付けるということを続けています。
個人でできること
ウィキペディアにあるような「地域住民での共同管理」という理想は、正直なところハードルが高く、理想的な形で実行できている地域はいったいどれくらいあるのでしょうか。
「地域で一丸となって取り組むなんて無理」と感じる人が圧倒的に多いと思います。
それよりは、個人個人ができる範囲で地域猫としてお世話するというのが現実的なのではないかと思います。
野良猫を保護する際の注意点
今回ご紹介している野良猫との関わり方は一般的にTNRと呼ばれています。
ご自身の敷地内に姿を現す野良猫を、ご自身の敷地内で地域猫としてお世話するのが、最もスムーズに取り組める形だと思います。
もし保護しようとする猫がご自身の土地ではない場所にいる場合は、TNRについて行政が発信している情報があるため、そちらを参考にして行動することをお勧めします。
手術するには予約が必要です
野良猫を手術するには、連れて行こうと思っている動物病院へ事前にTNRを行う旨を伝え、手術する日を決める必要があります。その際にもしかすると「あすなろ猫」のようなTNRに対する何らかの支援を受けられるかもしれないので、質問してみるのもいいかもしれません。
「置きエサ」だけはしないように
ここまで記事を読まれた方にはご理解いただけていると思いますが、この「置きエサ」をしてしまっては野良猫が増える原因を作ることにつながり、あなたのTNR活動自体が地域に悪い影響を与える活動となってしまいます。
個人で取り組む場合はより一層エサの管理にはご注意ください。
地域猫と関わるメリット
猫に頼られる
それはもちろん、あなた自身がかわいい猫から頼られる存在になれるということです。
誰かから頼られているという事実は「貢献感」に繋がります。フロイト・ユングと並ぶ心理学の世界三大巨頭の1人・アドラーは「人の幸せとは貢献感のことである」と結論づけています。
地域猫と関わることで、小さな幸せを日々感じられる生活を手に入れられるかもしれません。
殺処分される猫を減らせる
目の前の猫を助けることができるだけでなく、将来生まれる可能性が高い不幸な猫も減らせます。
地域猫と関わるデメリット
遠くへの外出がしづらくなる可能性
もし地域猫を個人でお世話している場合、その地域猫にエサを出すのは基本的に自分自身になります。
また「置きエサ」は繁殖能力のある猫が食べる危険性があるため、地域猫が食べ終えるのを待ち、残りは責任を持って片付ける必要があり、エサを出して片付けるまである程度の時間が掛かります。
自分以外にもエサを与えてくれる人が地域の中に誰かいればいいのですが、そうではない場合、猫たちが心配で数日かかるような遠くへの外出がしづらくなるかもしれません。
そのため、地域全体とは言わなくても、数人の協力者がいてエサやりを分担できるようになっておくと将来的に安心です。その場合もとにかく「置きエサ」はしないよう気をつけましょう。
いなくなったときの不安
外でお世話する以上は、何らかのトラブルで突然その猫が姿を現さなくなる可能性があります。
しばらくしたら何事もなかったようにまた姿を表すこともありますが、全く会えなくなることもあります。
楽観的な人はあまり気にならないかもしれませんが、そうじゃないタイプの人は心配しすぎて私生活に影響が出るかもしれません。
そこまで心配になるようだったら、家で飼う可能性を検討するか、安心して預けられる里親を探すというのも手です。
まとめ
地域猫活動を地域ぐるみで実践している方がこの記事を読んだとしたら、色々と指摘したくなる点があるかもしれませんが「不幸な猫が生まれないため」という目的は一緒なので、ご理解いただいた上でコメントなどいただけると嬉しいです。
猫の保護活動をしている人たちの間では、野良猫のことを「飼い主のいない猫」と呼んでいますが、今回は一般的なわかりやすさを優先して終始「野良猫」と呼ぶことにしました。もし不快に感じた方がおりましたらご容赦ください。
私が小学生の頃、家の物置で生まれた野良猫の赤ちゃんが海へ流される姿を見せられ、「なんでこんなひどいことをするんだ」と心底思った経験があります。
猫と触れ合う生活は、家で飼うという形だけではありません。地域猫としてお世話するというのも「不幸な猫が生まれない活動」として、とても有意義な猫との付き合い方であると、私は思います。
今回は「うちでは飼えないけど野良猫を助けたい」と思っている人に向けて、個人でもできる対処方法についてご紹介しました。
この記事を読んだ誰かが、どこかで地域猫との信頼関係を築いて幸せな人生を過ごせるようになったとしたら嬉しいです。
私たちが最近保護した野良猫「短足くん」を地域猫にした日の動画がありますので、野良猫の保護を検討中の方は参考にしてください。
最後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。ここまでお付き合いしてくださった方であれば、きっと現代の食文化についても疑問を持つのではないかと思います。
牛や豚、鶏など、食卓に出てくるこれらの動物が、まるで工場で「生産」されているかのように扱われているという現実、みなさんご存知でしょうか。
その問題を改善するために完全菜食主義「ヴィーガン」になる人が増えています。
私たち夫婦も最近ヴィーガンを目指して日々の生活を送るようになりました。
先日はそういった内容の記事も書いてみたので、興味のある方はぜひご覧ください。
同じテーマで動画も作りました
私たち夫婦が実際にどんな距離感で猫たちと関わっているかトークしています。興味のある方はぜひご覧ください。
お勧めの書籍
昔は取るに足らないただの動物だった「ホモ・サピエンス」について、過去から現在、そして未来までをも含めて深く洞察している書籍があります。
動物の幸せについて考える人にとっては、とても興味深く読める本だと思うので、まだ読んでいない方はぜひご一読ください。
この書籍の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏もヴィーガンです。
また、今回の記事の途中で出てきた心理学者アドラーが提唱するアドラー心理学をわかりやすく紹介しているベストセラーも私が大好きな本です。ぜひ読んでみてください。
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